コラム

家族の財産をしっかり守る!家族信託・相続~虎の巻~

家族信託基礎知識編・第2講~そもそも家族信託とは?

家族のイメージ

1.家族信託の登場人物と基本構造ー

2023-2-9

家族信託には、「委託者」「受託者」「受益者」という3人の登場人物が登場します。

「委託者」は自分の財産の管理を他人に依頼する人。
「受託者」は委託者から財産の管理を依頼される人。
「受益者」は委託者が受託者に預けた財産から生み出される利益を受け取る人です。

委託者と受益者は同一人物とすることができ、通常の家族信託では、委託者と受益者を同一人物とするケースが多いです。
なので、実質的な登場人物は委託者兼受益者と受託者の2名になることがほとんどです。

また、家族信託では、各登場人物を途中で変更する旨の定めを設定しておくことができます。例えば、受益者について、家族信託の開始当初は委託者と設定しておきますが、委託者が死亡した後は、委託者の子供や孫に受益者を変更する、という定めをしておくことが可能です。この性質を利用することで、家族信託は委託者の遺言のような機能を持たせることもできるようになっています。


相談のイメージ

2.家族信託の意義ー

2023-2-9

家族信託を利用する理由として最も多いのは委託者の認知症対策です。
認知症を患い、物事を判断することができなくなってしまうと、その方は法律的な行為が一切できなくなってしまいます。

例えば、不動産の売買契約や賃貸借契約などが不可能となります。
また、銀行口座からのお金の出金なども、認知症が進み、自ら意思表示ができなくなった時点で、後見制度を利用しなければできなくなってしまいます。
しかし、後見制度を利用すると、裁判所の監督や見ず知らずの専門家の関与、専門家に対する報酬の支払いの発生、本人の財産の利用方法の制限など、余計なおまけがたくさんついてきてしまいます。

さらに、後見は一度開始してしまうと本人が死亡するまでやめることができません。
後見人報酬は安くても月額2~3万円といわれていますので、本人がなくなるまでこの支払いが続くとすれば、支払いの合計金額は相当高額になってしまうことも考えられます。
それを回避するために利用されているのが家族信託です。
家族信託によって、親から子へ不動産の名義や預金を移動しておけば、親が認知症になってしまったとしても、受託者である子の意思で不動産の売却や賃貸ができます。
また銀行の手続も、元気な受託者であれば何の問題もなく行うことが可能です。
家族信託であれば、裁判所や第三者である専門家の関与はなく、後見人報酬が発生してしまうこともありません。
後見制度が抱える問題を一掃できると言っても過言ではないのが家族信託です。

以上、家族信託の利用者数が急激に増加している理由がご理解いただけたのではないでしょうか?
次回は、家族信託において重要な役割を担う受託者について掘り下げて解説をさせていただきます。
次回もお楽しみに。

家族の財産をしっかり守る!家族信託・相続対策~虎の巻1~

家族信託基礎知識編・第1講 ~なぜ今、家族信託なのか?~

家族のイメージ

1.成年後見制度の抱える問題を解決する家族信託

2023-1-10

家族信託は2017年2月28日にNHKの「クローズアップ現代+」という番組で取り上げられて以来、数々のテレビ番組で取り上げられるようになり、一気にその知名度が向上しました。制度としては、実は2007年9月30日の新信託法の施行の時から存在していました。

しかし、当時は詳しい専門家が少なく、また家族信託の活用に必須となる銀行の対応が追いついていなかったため、日の目を見ないまま約10年という月日が経過してしまったのでした。

ご存知のように、この10年で日本社会の高齢化はさらに進みました。(平成28年度の65歳以上の人口割合は27.3%・総務省調べ)また、銀行等金融機関のコンプライアンスの強化に伴い、預金出金時の本人確認が厳しくなり、高齢で認知症にり患した親の介護費を子供が親の口座から降ろすことが難しくなりました。

どうしても認知症の親の口座から介護費を引き出したい場合には、後見制度を利用するしかありませんが、後見制度は裁判所の監督や見ず知らずの専門家の関与があるうえ、本人の財産の利用方法の制限がされてしまうために、本人の親族からすると非常に使いづらい制度でした。

また、後見制度は専門家の関与による専門家報酬の負担も発生するため、経済的にも利用者を圧迫する構造がありました。認知症によって法的なサポートを必要する高齢者の増加、成年後見制度の制度上の問題の露呈。

このような背景から、昨今その存在が見直され始めたのが家族信託の制度です。家族信託は、その名の通り、家族に財産の管理を任せる制度です。

制度といってもその構造は当事者間の契約行為に過ぎず、財産を任せる側(高齢の親)と任される側(子)が信託の契約をするだけで簡単に効力を発生させることが可能です。

また、契約の内容は原則自由ですので、成年後見制度のように財産の利用方法に制限が加えられてしまうようなこともありません。当然、裁判所の監督もなければ見ず知らずの専門家の関与もありません。

高齢者の法的サポートという、従来成年後見制度の利用の目的とされていた部分を、裁判所の関与、専門家の関与、財産の利用制限という成年後見制度において問題とされていた部分を排除した形で実現できるのが家族信託なのです。

後見制度の問題を解決する手段として潜在的なニーズがあった家族信託が、NHKの特集などによってその認知度を高めたため、一気に利用者数が増加した、というのが今の現状です。



2.家族信託利用の環境が整い、 誰でも利用できるようにー

2023-1-11

また、家族信託の利用が増加した大きな要因はもう一つあります。それは、家族信託を支える社会インフラ、すなわち銀行等の金融機関と、法務・税務の専門家である税理士・司法書士の家族信託に対する対応がここ2~3年でようやく追いついてきた、という点です。

家族信託を活用するには、その契約締結時に法律面、税金面でリスクがないかチェックできる専門家の関与が必須となります。

今まで、家族信託に対応できる専門家はごく一部でしたが、TVなどにより家族信託の情報を仕入れた顧客側からの要望によって、家族信託を取り扱う専門家は徐々に増えて来ました。(まだまだ少ないですが。)

また、家族信託開始後は、財産を任された側は自分の個人的な財産とは別の口座を開設して信託財産を管理しなければなりません。

その際には、その口座名には「受託者(信託をされている人の呼び方)」という名義が入っている口座の開設が必要となりますが、そのような名義の口座開設に銀行が対応し始めたのはここ数年の話です。

このように、この2~3年での急激に家族信託の知名度の向上の結果、家族信託を活用する環境が整ってきました。

今後は、誰もが当たり前に家族信託を活用して財産を守る世界になっていくでしょう。次回からは、家族信託に関する具体的な基礎知識についてご案内をしていきます。

お楽しみに。